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国家試験合格対策ドリル(2019〜2020)Vol.4 判断プロセスに重点を置いて体系的にまとめよう

国家試験合格対策ドリル 第4回

皆さんの中には、基礎を問う出題が増えたとしても、その基礎事項をなかなか定着させることができない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、厳しい言い方かもしれませんが、看護系の学校を目指そうと決心したときの気持ち、つまり初心に立ち戻って、国試と向き合っていただければと思います。国試の勉強を、たんなる受験勉強にせず、看護職に必要な知識を身につける機会ととらえ、知識が増えることを楽しんでいきましょう。

このような勉強は、本当の意味でのアクティブ・ラーニングであると言えます。考えさせるようになってきた出題傾向にもアクティブに取り組んでいきましょう。

患者さんに説明しているかのようにして勉強を進めましょう

国試の究極的な勉強法は、勉強している事柄について、あたかも自分が患者さんを目の前にして説明しているかのようなイメージを思い描いて、まとめておくことです。いずれ皆さんは、患者さんとたえず向き合っていくことになります。その場合の真剣さを、勉強のときから意識しておくことも必要です。説明できる能力は、改定出題基準でも、明示はされていませんが、求められていると言えます。

学んだことは、そのままでは身につきません。実習で、実際に、どうなっているかを見聞しましょう。それが実習の本来の意味です。最近の出題では、比較的新しい医療器具・治療法も取り上げられるようになっていますので、この実習の時期に、それらを現場で確認してみてください。「学んで時にこれを習う、また説(よろこ)ばしからずや」という言葉が『論語』にあります。学んだことを、折にふれて繰り返し学習することによって身につけてゆくのはなんと楽しいことではないか、ということです。学んだ知識を臨床の場で確実なものにしていきましょう。

改定出題基準による新傾向

第107回の国試から、出題基準がまた改定されています。前回の出題基準の改定から、看護師国家試験は、看護師に求められる実践能力と看護学校卒業時の到達目標等を反映した内容となるように改革され、基礎を問う出題となるように強く意識して問題が作成されるようになり、国試の出題の仕方自体がポイントをおさえるようになったといえます。

今度の改定もこれを受け継ぎ、さらに、「体系的」ということを強く意識した出題になりました。改定出題基準の解説のいたるところで、「体系的に問うことができるよう、項目を整理・追加した」という表現が繰り返されています。この、「体系的」というのは、言い換えると、知識同士のリンクということです。これは、出題基準を改定する過程で、「基礎的知識を状況に適用して判断を行う能力を問う」ということが重視されるようになり、「判断プロセス」がキーワードになったということを踏まえたものです。これに伴って、各機能障害のある患者について、アセスメント/検査・処置/治療/看護の体系的な知識が問われることになりました。そして、必修問題の出題として、基本的な臨床検査値の評価が明記されています。

以下では、第108回での出題を見ることで、新傾向を把握してみましょう。第108回では、国試対策本で説明されていない基本的な項目を、あえて選んで、出題が行われた可能性があります。教科書に立ち戻って、知識を補うようにしましょう。

【例題1】第108回午前96(改変)

Aさん(37歳、女性、会社員)。身長155 cm、体重57 kg。Aさんは、入浴中に右胸のしこりに気づき、病院を受診した。検査を受けたところ、右乳癌と診断された。
Aさんは、乳房温存療法を希望したが、腫瘤が大きいため、術前化学療法としてEC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)を3週ごとに、4サイクル受けた。
退院後、Aさんは、職場の上司と相談し、仕事を継続しながら化学療法を受けることになった。その2サイクル目の治療のため、化学療法センターに来院した。Aさんは「1回目の治療のあと、数日間身体がだるくて食欲もなく、体重が1キロ減りました。仕事も休みました」と看護師に話した。
検査所見:白血球2,300/μL(好中球55 %、単球5 %、好酸球4 %、好塩基球1 %、リンパ球35 %)。
2サイクル目の化学療法を受けたAさんに行ってもらうセルフモニタリングで最も重要なのはどれか。

 1.脈拍数
 2.体温
 3.血圧
 4.体重

【正答】 2

抗癌剤を使用しているときには、問題文に何も書いていなくても、患者さんの免疫力が低下して何らかの感染症にかかりやすくなる、と考え、ふだんから体温を測定してもらうようにします。体温が上昇すれば、感染症にかかった可能性があります。

【例題2】第108回午後92(改変)

Aさん(52歳、男性)は、5年前にC型肝炎、肝硬変と診断され、1回の入院歴がある。退院後、医療機関への受診を中断し3年が経過している。毎日、ウイスキーを約300 mL飲んでいる。夕食の2時間後に約1,100 mLの吐血があり、緊急入院となった。
入院から4日が経過し、Aさんは医師から「C型肝炎、肝硬変の患者は肝細胞癌を発症することがある」と説明を受けた。Aさんはスクリーニングの目的で、肝臓から骨盤内臓器までの範囲で腹部超音波検査を受けることになった。
検査前日に看護師が行う説明で正しいのはどれか。

 1.「検査直前に排尿を済ませてください」
 2.「おならは検査が終わるまで我慢してください」
 3.「造影剤のアレルギーがあれば教えてください」
 4.「検査当日は、起床時から飲食物を摂取しないでください」

【正答】 4

検査当日の飲食物は禁止となります。ここでは、下腹部臓器を観察するために、排尿はしないことがポイントです。他の検査についての問題では、排尿を済ませておくというのを選ばせることが多いことに注意が必要です。

【例題3】第108回午前118(改変)

Aさん(81歳、女性)は、1人暮らし。7年前から糖尿病、高血圧症、便秘症で病院の内科に定期的に通院しており、近所に住む長女が時々様子を見に来ていた。本日、長女がAさん宅を訪ねたところ、Aさんは床に倒れて起き上がれなくなっていた。受診の結果、胸椎と腰椎の圧迫骨折で病院に入院した。入院時、Aさんは病棟看護師に「朝食は食べていません。朝の薬を飲んだと思うが、はっきり覚えてません。家に帰ればわかります」と話した。病棟看護師が体のことで心配なことはあるかを問うと「この半年で体重が2 kg減りました。最近は疲れやすく歩くのもゆっくりで、握力も弱くなり荷物を持つのがつらいです。このまま寝たきりになるのではないかと不安です」と話した。内科のカルテには1か月前の計測で身長150 cm、体重41 kgと記載されていた。入院時のバイタルサインは、体温36.6 ℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧144/88 mmHg。血糖値114 mg/dLで、軽度の皮膚湿潤があった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは29点であった。
入院時のアセスメントで適切なのはどれか。

 1.頻脈がある。
 2.低血糖である。
 3.フレイルである。
 4.高度な認知機能の低下がある。

【正答】 3

フレイルは、新出題基準から導入されたカタカナ語で、身体がストレスに弱くなっている状態のことを指しますが、早く介入をすれば元に戻る可能性があります。高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険性があります。
フレイルは、元来は、海外の老年医学の分野で使用されている「frailty(フレイルティ)」に対する日本語訳で、「frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などということになります。日本老年医学会は、高齢者において起こりやすい「frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」という共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。

体重減少、疲労感、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下の5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合はフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。
加齢に伴う変化や慢性的な疾患によって、まず、サルコペニアという状態となり、筋肉量・筋力の減少によって基礎代謝量が低下すると、1日のエネルギー消費量が減って、食欲が低下し、食事の摂取量が減少して低栄養となります。サルコペニアは、筋力の低下、易疲労性や活力の低下を引き起こし、身体機能の低下につながります。認知機能の低下など精神的な面の低下も加わると、活動量が低下し、社会的な側面も障害され、日常生活に支障をきたすようになります。
日常生活に介護が必要な状態となると、ますますエネルギー消費量は低下し、食事量が低下して低栄養となる悪循環を繰り返しながら、フレイルは進行していき、このような悪循環をフレイルサイクルといいます。このようなフレイルサイクルを断ち切る、またはフレイルサイクルのスピードを遅くするための介入方法には、持病のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症の予防などが挙げられます。

なお、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は30点満点で、20点以下を認知症の疑い、21点以上を正常、と判定します。これは、認知症のスクリーニングを目的に作成されたものであって、得点による重症度分類は行いません。

学習方法の工夫も大事です。基礎となる解剖生理学から病態生理学や看護技術へとリンクさせることをドリルの第2回で取り上げましたが、疾患や治療法を勉強しているときは、逆に、その根拠を解剖生理学などに求めてみましょう。もちろん難しいですから、一部で構いません。このような工夫は改定出題基準への対応ともなります。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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