国家試験合格対策ドリルVol.4 患者さんに説明する自分を想像して勉強を進めよう

皆さんの中には、基礎を問う出題が増えたとしても、その基礎事項をなかなか定着させることができない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、厳しい言い方かもしれませんが、看護系の学校を目指そうと決心したときの気持ち、つまり初心に立ち戻って、国試と向き合っていただければと思います。国試の勉強を、たんなる受験勉強にせず、看護職に必要な知識を身につける機会ととらえ、知識が増えることを楽しんでいきましょう。

そして、改定出題基準には、新しい項目が入りました。今後の医療のあり方に大きく関わる項目が多いと言えます。参考書に載っていない事項が多いですから、早目に自分で調べて、充分に理解しておきましょう。

改定出題基準の新しい項目

改定出題基準には新しい項目が入りました。
特に目立つのは、次の項目です。第103回で、すでに出題されたものもあります。

・エンパワメント
・アポトーシス
・看看連携

・アドバンスディレクティブ
・インクレチン
・ワーク・ライフ・バランス

・インフォームドアセント
・地域連携パス
・措置制度から選択、利用制度へ

ここでは、次の3項目について解説します。ほかの項目は、自分で調べてみてください。

エンパワメント(empowerment)

個人や集団が自分の人生の主人公となるために本来持っているパワーを発揮するようにし、自分自身の生活や環境をよりコントロールできるようにしていくこと。すなわち、ヘルスプロモーションにおいて、個人や社会集団が、自らのニーズを表現し、関心を示し、意思決定への参加戦略を考え出して、ニーズを満たすための政治的・社会的・文化的行動をなしうるようになるプロセスのことであり、そのようなプロセスを通じて、努力すれば生活・健康上の成果が得られる、ということを気づかせるような状況を創造していく。

アドバンスディレクティブ(advance directive)

日本語では事前指示。患者が医療や介護を受けるとき、治療方針の拒否や承諾を含む意思を、判断能力があるときに、あらかじめ書面で指示しておくもの。特に、文書で示したものを、リビングウィル(living will, 生前意思)という。

インフォームドアセント(informed assent)

小児患者の治療に際して、医師が保護者からのインフォームドコンセントを得るだけではなく、当事者である子どもに対しても治療に関する説明を行い、その同意を得ること。

術式や治療法を理解した上で説明できるようにしましょう

国試の究極的な勉強法は、勉強している事柄について、あたかも自分が患者さんを目の前にして説明しているかのようなイメージを思い描いて、まとめておくこ とです。いずれ皆さんは、患者さんとたえず向き合っていくことになります。その場合の真剣さを、勉強のときから意識しておくことも必要です。説明できる能力は、改定出題基準でも、明示はされていませんが、求められていると言えます。

疾患や術式・治療法の勉強では、根拠を解剖生理学に求める

学んだことは、そのままでは身につきません。臨床の場では、実際に、どうなっているかを見聞しましょう。それが実習の本来の意味です。改定出題基準では、比較的新しい術式・治療法も取り上げられるようになっていますので、この実習の時期に、それらを現場で確認してみてください。「学んで時にこれを習う、ま た説(よろこ)ばしからずや」という言葉が『論語』にあります。学んだことを、折にふれて繰り返し学習することによって身につけてゆくのはなんと楽しいことではないか、ということです。学んだ知識を臨床の場で確実なものにしていきましょう。

また、学習方法の工夫も大事です。基礎となる解剖生理学から病態生理学や看護技術へとリンクさせることを第2回で取り上げましたが、疾患や術式・治療法を勉強しているときは、逆に、その根拠を解剖生理学などに求めてみましょう。もちろん難しいですから、一部で構いません。このような工夫をすれば、学習が立体的になります。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』『使える!第101回・第100回看護師国家試験解説』などがある。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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