国家試験合格対策ドリルVol.4 患者さんに説明する自分を想像して勉強を進めよう

国家試験合格対策ドリル 第4回

皆さんの中には、基礎を問う出題が増えたとしても、その基礎事項をなかなか定着させることができない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、厳しい言い方かもしれませんが、看護系の学校を目指そうと決心したときの気持ち、つまり初心に立ち戻って、国試と向き合っていただければと思います。国試の勉強を、たんなる受験勉強にせず、看護職に必要な知識を身につける機会ととらえ、知識が増えることを楽しんでいきましょう。

このような勉強は、本当の意味でのアクティブ・ラーニングであると言えます。考えさせるようになってきた出題傾向にもアクティブに取り組んでいきましょう。

患者さんに説明しているかのようにして勉強を進めましょう

国試の究極的な勉強法は、勉強している事柄について、あたかも自分が患者さんを目の前にして説明しているかのようなイメージを思い描いて、まとめておくことです。いずれ皆さんは、患者さんとたえず向き合っていくことになります。その場合の真剣さを、勉強のときから意識しておくことも必要です。説明できる能力は、改定出題基準でも、明示はされていませんが、求められていると言えます。

医療器具の取扱いを実習で見てみましょう

学んだことは、そのままでは身につきません。臨床の場では、実際に、どうなっているかを見聞しましょう。それが実習の本来の意味です。改定出題基準では、比較的新しい術式・治療法も取り上げられるようになっていますので、この実習の時期に、それらを現場で確認してみてください。「学んで時にこれを習う、また説(よろこ)ばしからずや」という言葉が『論語』にあります。学んだことを、折にふれて繰り返し学習することによって身につけてゆくのはなんと楽しいことではないか、ということです。学んだ知識を臨床の場で確実なものにしていきましょう。

第105回では、医療器具の取扱いに関する出題が目立って増えていて、特に、必修問題で看護技術の問題の割合が多くなっていることに注意が必要です。医療器具については、国試対策本に記載のない項目が出題されたりしており、現場で見聞することが大切です。このような出題傾向は、医療現場で必要な知識を重視する改定出題基準に即するものです。

第105回午前31(大幅に改変。画像を省略)

腹部の画像検査のうち、生体の代謝を利用した検査はどれか。
 1.腹部単純X線
 2.腹部造影CT
 3.PET-CT
 4.カラードップラーエコー(超音波)

【正答】 3

まず、腹部単純X線と腹部造影CTは代謝とは関係ありません。
また、カラードップラーエコー検査では、青色は遠ざかっていく血流を表し、赤色は近づいている血流を表しますが、代謝とは関係ありません。

PETは、positron emission tomography(陽電子放出断層撮影)の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種です。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化します。
PET検査では、全身を一度に調べることができます。使用する薬剤は現在、大半が、ブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGというもので、そのため、FDG-PET検査とも呼ばれます。
PET検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常をみます。臓器の形状だけで判断がつかないときに、機能をみることで診断の精度を上げることができます。PET検査は、癌や炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されたりしています。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われています。

癌細胞の活動のエネルギーの元はブドウ糖で、癌細胞は正常細胞の何倍もの量のブドウ糖を取り込むため、18F-FDGも癌の病巣に集まります。集まったところからは放射線が多く放出されるので、それを捕らえて画像化することにより、癌の病巣を見つけ出すことができます。また、脳神経の活動の元になるのはブドウ糖です。脳はブドウ糖しかエネルギーに使うことができません。一方、心臓や骨格筋では、ブドウ糖は働くための燃料の一つです。FDG-PETの画像では、脳に18F-FDGがたくさん集まり、筋肉には運動中や運動後に18F-FDGが集まります。心臓はブドウ糖を使うときだけ18F-FDGが集まります。白血球などの免疫細胞が活動して細菌を殺す防衛反応で炎症となりますが、免疫細胞の活動のエネルギーもブドウ糖です。よって、肺炎などの炎症病巣にも18F-FDGは集まります。

ブドウ糖の代謝状態を正しくとらえるために、検査前5~6時間は絶食します。ジュースやスポーツドリンクなど糖分を含む飲み物は禁止です。18F-FDGは静脈注射し、全身に薬剤が行きわたるまで1~2時間は安静にします。その間、体を動かすと、使った筋肉に薬剤が集まってしまうので、安静に過ごします。なお、血糖値が高いと検査の精度が落ちる可能性があります。

現在はPETとCTを組み合わせたPET-CT検査が一般的です。18F-FDGが集まる様子を撮影するPETと、臓器の形状を撮影するCTを組み合わせ、一度の検査で両方の画像を重ねて表示することができるようになり、診断精度が向上しています。

画像検査で、まだ出題されていないものにMRIがあります。そろそろ出題されるはずですので、ご自身でも調べてみてください。MRI(magnetic resonance imaging, 核磁気共鳴画像法)は、体内の水素原子が持つ弱い磁気を、強力な磁場でゆさぶり、原子の状態を画像にします。磁石が埋め込まれた大きなトンネルの中に入ってもらい、FMラジオに用いられる電波を身体に当てることによって原子核の歳差運動というものを起こし、電波の照射をやめたときの各組織における戻り方をコンピュータで計算して、体内の様子を画像として表します。元の状態に戻るときに30分~1時間もの時間がかかります。病変部のコントラストが良好ですが、骨や肺の描出が難しいです。ペースメーカーを埋め込んでいる患者には適応できません。また、狭い場所に入るので、閉所恐怖症の患者には不向きです。

第105回午前24(必修)(大幅に改変。画像を省略)

次に示すベンチュリーマスクの構成物のうち、酸素流量の設定と併せて吸入酸素濃度を調節するのはどれか。
 1.マスク本体
 2.コネクタ付蛇管
 3.ダイリュータ
 4.酸素チューブ

【正答】 3

ベンチュリーマスクのベンチュリー効果とは、例えば、チューブの中を空気が流れる際に、その内径が小さくなると空気の速度が速くなり、その部分の圧力が他に比べて低くなる効果のことです。この原理は、霧吹きやノズルなどにも用いられています。
ベンチュリーマスクでは、酸素チューブから酸素が供給され、細径に絞り込まれたダイリュータを通り、その出口において、陰圧となって周辺の空気を巻き込むベンチュリー効果によって、酸素流量に依存した吸入酸素濃度が供給されます。細径のサイズが異なる色別された数種類のダイリュータと、供給する酸素流量を選択して、目的の吸入酸素濃度を供給します。単回使用となります。元々の問題では、橙色のダイリュータが接続されています。
ベンチュリーマスクは、呼吸困難な患者に、酸素を一定量で供給するためのマスクで、吸入酸素濃度が調節できるため、低酸素血症や呼吸器・心肺機能の疾患などに使用されます。

操作方法は次のようになります。
①医師の指示に従い、適切な色のダイリュータを選択します。
②適切なサイズのダイリュータを、蛇管の溝に確実にはまるまで、押し込みます。
③酸素チューブをダイリュータに接続します。
④酸素流量を設定します。注意:酸素が流れていることを確認します。
⑤マスクを患者の口と鼻を覆うようにあてます。
⑥ヘッドバンドを患者の頭に回し、適切な長さに合わせて不快感がないように調節します。

第105回午前71(大幅に改変。画像を省略)

成人女性に膀胱留置カテーテル(バルーン付き)が挿入されている場合、体内に留置されている長さで最も適切なのはどれか。この場合の長さは、カテーテル本体の先端からの長さとする。
 1.4.2 cm
 2.6 cm
 3.9 cm
 4.12 cm
 5.15 cm

【正答】 3

尿道の長さは、女性と男性では大きく異なります。女性の尿道は4~5 cmです。そして、カテーテルにバルーンが付いていることから、この導尿は「一時的導尿」ではなく「持続的導尿」です。女性の場合は、まず、カテーテルを4~5 cm挿入し、きちんと尿道口に挿入されていれば、尿の流出がみられます。それから、さらに3~4cm程度挿入し、バルーンが完全に膀胱内に入るようにします。よって、カテーテル本体の先端から9 cmほどの長さが適切ということになります。流儀によっては、バルーンを過ぎてから5 cmほどの長さとする場合もあります。この長さを超える場合、膀胱壁を傷つけてしまう可能性があります。男性の場合は、陰茎を垂直に持ち上げて、22cmほどの長さとなります。

また、学習方法の工夫も大事です。基礎となる解剖生理学から病態生理学や看護技術へとリンクさせることを第2回で取り上げましたが、疾患や術式・治療法を勉強しているときは、逆に、その根拠を解剖生理学などに求めてみましょう。もちろん難しいですから、一部で構いません。このような工夫をすれば、学習が立体的になります。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。動画配信サイト「メディカルアップ」で名講義を公開中。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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