狭山病院 外科病棟管理科長
緩和ケア認定看護師
六反 勝美(ろくたん かつみ) さん
狭山病院の内科病棟管理科長を経て、現在は外科病棟管理科長という要職を務める六反勝美さん。ナースの卵だった17年前、実習で終末期医療に携わったことが彼女の運命を変えた。新人の頃から変わらない、緩和ケアへの想いとは...?
看護師になることに対して迷いがあった学生の頃
「当時は、どうしても看護師になりたいと思っていたわけじゃないんです」。そう言って六反さんは、やわらかく微笑んだ。地域医療を支える狭山病院で外科病棟管理科長の要職を務める現在の姿からは、なかなか想像できない話だ。
「私の姉が看護学校に通っていて、その影響で私も進学することにしただけという...(笑)。だからでしょうね。実習のときに指導担当の看護師さんから『そんな気持ちで仕事できると思ってるの?』と叱られてしまって。とてもくやしいと思うのと同時に、きちんと頑張ろうと決意できたんです。あの指導看護師さんに出会えたおかげで、今の私があるのかもしれませんね」
六反さんの人生を変えた、もう一つの出会いは看護学校で経験した終末期実習。希望したわけではなかったが、この偶然の"出会い"が、その後の六反さんの道に影響を与えた。
「亡くなっていく人に何をしてあげたらいいのか、まったくわからなくて病室に行くことが苦しかった。何もできない自分も歯がゆかったですし。でも、趣味を続けるなど、自分らしさを保つことで、患者さんは生きていることを実感できるんですよね。その喜ぶ姿を見たときに、私はターミナルケアに関わっていきたいなと思ったんです」
やりたいことが見つからないまま看護学校へ進んだ少女は、いつのまにか看護の喜びを見い出していた。
緩和ケア勉強会を経て認定看護師の取得へ

病院最上階にあって日当たり良好な緩和ケアユニットは、全8室とも個室で、各室にテレビや電話、冷蔵庫、ソファなど自宅のような設備が備わっている。季節の花が咲き誇るテラスでは、風を受けてのんびり過ごせる。
新人看護師として外科病棟で働き始め、急性期の患者さんの看護にあけくれた六反さん。一方で、がんの再発で終末期を迎え、死を前にして苦しむ患者さんたちに「何かしてあげたい」という想いをつのらせていった。思い切って病院を辞めた彼女は、一冊の本を手にする。末期がんの患者さんの死が描かれた『病院で死ぬということ』だ。
「この本を読んでホスピスの存在を知り、イギリスにある施設の見学にも行きました。死んでゆく患者さんに『何もできない』わけじゃないんだ、と改めて思うことができましたね」
緩和ケアに対する想いが強くなった六反さんは埼玉県の看護協会に問合せて緩和ケアに取り組んでいる病院を探す。そしてめぐりあったのが狭山病院だ。98年、緩和医療科のある狭山病院に入職。医師や看護師仲間とともに勉強を続け、翌年には緩和ケア看護師養成研修にも参加した。05年に全8床の緩和ケアユニットがオープンし、主任に就任。06年には緩和ケアの認定看護師資格を取得...と、着々とキャリアを積み上げていった六反さん。そして08年、緩和ケアユニットを含む内科病棟管理科長として緩和ケアの責任者になった。
亡くなっても終わらない、生きる意味を考え続けて

内科の緩和ケアユニットを離れた今も、患者さんとの面談をはじめとしたコンサルテーションを行っている六反さん。日々、進歩し続ける緩和ケアの現状を知るために、書籍や研究資料から知識を吸収する努力は欠かせない。
「この病院に入職以来ずっと内科にいましたので、『外も見なさい』ということで外科に異動になりました(笑)」
今年3月、外科病棟管理科長になった六反さんは緩和ケアユニットという部署を越えて、院内全体でコンサルテーションを行っている。緩和ケアユニットに入りたい患者さんと面談したり、部下の看護師たちを育てるのも大切な役割だ。
「まずは、患者さんとの関わりを学んでほしいなと思っています。たとえば、『亡くなったら終わり』と思っている方は多いと思いますが、それは間違い。以前、亡くなった患者さんの枕元で『おじいちゃんの病気のおかげで家族が団結できたよ。これからも、みんなで頑張るからね』とおっしゃっているご家族がいました。ご家族も、私たち看護師も、亡くなった方のおかげで成長することができるんです。後輩たちにも、こういった経験を緩和ケアに、次の患者さんに活かしてほしいと思っています」
さらに、六反さんは「緩和ケアが終末期だけじゃないことも知ってほしい」と言う。
「体や心の痛みすべてに関わるのが緩和ケア。亡くなっていく人のためだけのものじゃありません。院内の全員が緩和ケアに関わる可能性があるということ、また関わったときにきちんと対応できることを目指して、知識と技術を伝えていきたいと思っています」(終)
六反さんへの3つの質問
Q1.ストレス発散方法は?
A.ショッピングです。洋服や靴をさがして、銀座に行くことが多いです。
Q2.趣味は何ですか?
A.海外旅行とサッカー観戦が大好き。今度はヨーロッパ、特にイタリアに行ってみたいです!
Q3.尊敬する人は?
A.『病院で死ぬということ』の著者で、在宅医の山崎章郎先生。
今後も、ご指導いただきたいですね。















