第99回看護師国家試験からは新しい出題基準を用いて試験が実施されます。その中でも必修問題の項目が大幅に増えたことは特筆すべきことでしょう。必修問題は問題数が50問に増えることも決まっています。合否に大きく関わることですから、今回は主な改定点について触れておきます。
その1.まず始めに〜出題基準改定の概要〜
今回の保健師・助産師・看護師国家試験の出題基準改定について、厚生労働省からは次のように発表されています。
「近年、人々の療養の場はますます多様化しており、在宅や地域で療養する人々を支えることや、災害若しくは虐待などの社会問題への対応といったことも重要な課題となっている。このような状況の中、これまで以上に重要な役割を果たすことが期待されている看護職員の資質の向上を図るため、平成19年4月にとりまとめられた「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」を受け、保健師助産師看護師学校養成所指定規則が改正され、看護基礎教育カリキュラムが改正されたところである。一方、平成20年3月にとりまとめられた「保健師助産師看護師国家試験制度改善部会報告書」において、国家試験出題基準については、看護を取り巻く近年の状況を踏まえ、看護師国家試験の必修問題を強化するため出題範囲の拡大について検討することが提言された。」(前後略)
ただし、国家試験対策という視点では全体像をイメージしにくいと思います。ですから、これについてはあまり気にする必要はありません。むしろ注意しなければならないのは次のことです。
- ◎近年の医療や看護を取り巻く環境の変化に伴い、より重要さが増していると考えられる教育内容に関する項目の精選と充実を図った。
- ●薬剤の用法や薬効の理解、緊急時の対応、看護倫理及び看護技術等に関する項目の充実を図った。
- ●大・中・小項目のそれぞれの位置付けを再確認し、中項目間あるいは中項目と小項目との整合性を図った。
保健師・助産師・看護師国家試験の全体的事項としてこのように述べられています。そして、看護師国家試験の必修問題については次のことも記されています。
- ◎「必修問題」では、必修問題の対象となる基本的知識及び技術は重要であることから、これらの基本的かつ重要な事項を問う問題を強化するための出題数が増加される。それらに対応するため、出題範囲を拡大することとし、出題範囲の全領域にわたり小項目数の拡大を図った。特に看護活動の場の拡大や活動内容の多様性、基本的看護技術の充実を念頭に置いた。
これらは必修問題の出題において直接関わってきますから、できるだけ頭の中に残しながら学習していくようにしましょう。(他の分野については厚生労働省のホームページを参照して下さい。)
その2.イメージしよう〜必修問題と出題基準〜
必修問題は4つの項目(目標Ⅰ〜Ⅳ)から成り立っています。
- 目標Ⅰ 看護の社会的側面および倫理的側面に関する基礎的知識を問う
- 目標Ⅱ 看護の対象者および看護活動の場に関する基礎的知識を問う
- 目標Ⅲ 看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復についての基礎的知識を問う
- 目標Ⅳ 看護技術の基本を問う
この4つの項目は皆さんが学習してきた内容の一部をまとめ直したものであると考えて下さい。例えば「目標Ⅳ 看護技術の基本を問う」は100%基礎看護技術に関することから出題されています。これは「皆さんがきちんと学んだ基礎看護技術に関する基本的なこと」から出題されることになっており、学習の範囲外からの知識は求められません。
ですから、必修問題には、必修問題にしかない範囲はありません。 別の言い方をすれば、「必修問題の出題範囲は全領域の一部であって、全範囲の学習ができていれば必修問題は必然的に点数を取れる」ものになっているのです。
必修問題対策は行わないと不安でいっぱいになってしまうので、やらなくていいものとは言い切れません。しかし、必修問題の構成はこのようになっていると頭に入れておくことが大切です。しかも「その(それらの)基礎的知識を問う」ものですから、決して怖がらないことが重要です。
その3.見てみよう〜必修問題の出題基準 主な改定点〜
では、どんな点が変わったのか、主なポイントを見ておきましょう。(新しい出題基準が手元に無い人はこちらの厚生労働省のホームページを参照して下さい。)
目標Ⅰ 看護の社会的側面および倫理的側面に関する基礎的知識を問う
ここは目立って大きく変わったところはありません。
あえて言えば次の4点です。
- 1.『大項目2「健康と生活」中項目A「生活行動・習慣」』に「小項目f「ストレス」小項目g「メンタルヘルス」小項目h「ライフスタイル」小項目i「性行動」といった生活の変化や多様性を理解しているかどうかが加わった。
- 2.『大項目2「健康と生活」』に労働環境や生活環境についてが加わった。
- 3.『大項目4「看護の倫理」』の中に『中項目B「看護倫理」』が追加されて看護倫理についてより重要視されていることが反映された。
- 4.これまでの試験で「都道府県ナースセンター」について問う問題が出題されていたが、設置の大元である「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が明文化された。
目標Ⅱ 看護の対象者および看護活動の場に関する基礎的知識を問う
ここは『大項目9「主な看護活動展開の場と看護の機能」が充実されたことが大きな改正点です。『中項目C「地域・在宅での看護」』を新たに項目立てすることにより、看護活動の場が医療機関のみに終わらず、多種多様な社会資源を利用した在宅医療・看護へ移行することの重要性が示されています。この視点は必修問題以外の他分野でも重要視されている今回の大きなポイントの1つとなっています。看護師に求められる様々なニーズを国家試験でもしっかり問う準備が整ったと考えられるので、出題基準においては必修問題以外でもしっかり着目しておきましょう。
目標Ⅲ 看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復についての基礎的知識を問う
小項目はここだけで34項目も増加しました。しかも皆さんが苦手とする基礎医学系の範囲ですから、しっかり学習しないと必修問題で不合格となる理由で最も多い箇所になるかもしれません。
注目するべき点は『大項目11「病態と看護」、大項目12「主要疾患と看護」』が拡充されていて、全体的に抜けているところがなくなったことです。表現に関しても『大項目11「病態と看護」、中項目A「症状と看護」、小項目g「喀痰」』であったものが『小項目g「咳嗽・喀痰」』と細かく示されています。(言葉が加わった小項目は6つあるため、目標IIIにおいては40もの項目が増えたことになります。)国家試験で点数を取ることだけを考えるのであれば、この分野は一般問題も含め「国家試験に精通している医学系の人から出題のポイントを教えてもらい、必要以上はやらない、ハマらない」のが一番であることは変わりません。ただ、皆さんの全員が新宿セミナー始めそのような講座に参加できるわけではありません。個々で学習をしていくには時間がかかり大変ですが、抜けているところがなくなったと同時に出題基準が教科書通りにまとまった一面もあります。ですから順を追った学習はやりやすくなったとも考えられますので、教科書に沿って基本に忠実に見直すようにしましょう。
なお、薬剤関連については『大項目13「薬物治療に伴う反応」』から出題されます。前述のとおり、看護師国家試験では設問の強化が求められ、今回の改定では、必修問題でもかなり充実されています。具体的には、抗ウイルス薬(小項目b)・利尿薬(小項目g)・中枢神経作用薬(小項目j)・消炎鎮痛薬(小項目l)、「医薬品の安全対策(中項目B)」として「薬理効果に影響する要因(小項目d)、誤薬(小項目e)」が加わりました。基礎知識を必修化させることで、患者にとっていかに安全な経路で与薬がなされるかを問う問題が第99回でもしっかり問われると思います。
目標Ⅳ 看護技術の基本を問う
特徴的ことは何点かあります。
- 1.「バイタルサイン」が『大項目14「基本技術」、中項目B「フィジカルアセスメント」』へ変化し、さらに「意識レベルの評価(小項目b)、呼吸音聴取の方法と評価(小項目c)、腸蠕動音聴取の方法と評価(小項目d)、運動系の観察と評価(小項目e)」が加わり、分野を問わずに絶対不可欠であるフィジカルアセスメント技術の基本をしっかり押さえておくことが重視されたこと。
- 2.『大項目16「患者の安全・安楽を守る技術」、中項目B「医療安全対策」』に「誤嚥・窒息の防止(小項目d)、情報伝達と共有・管理(小項目e)、リスクマネジメント・セーフティマネジメント(小項目f)、インシデントレポート(小項目g)」が新たに加わり、看護師のリスク感覚の鋭敏化が重要視されてきた。
- 3.『大項目17「診療に伴う看護技術」』が拡大された。(ここはさらに4つに細かく分けて見ておきましょう。)
- ・『中項目B「薬物療法」に小項目b「薬効・副作用の観察」』、『中項目C「輸液管理」に小項目c「点滴静脈内注射」』が加わったことで、安全管理に関する看護技術を重視していく現状を表している。
- ・『中項目H「救急救命処置」に「小項目d「直流除細動器」小項目e「自動体外式除細動器〈AED〉」」が加わり、一時救命はABCだけでなくDも加える概念が確立されていることを示している。
- ・『中項目I「皮膚・創傷の管理」』は小項目から独立して3つの小項目で構成され、問われることが明確になった。(これは平成18年度の診療報酬改定において、入院基本料に褥瘡患者管理加算が新設されたことにより、臨床で働く看護師にとって褥瘡の危険因子や褥瘡のアセスメント、基本的ケア技術が必須となったことが影響していると考えられる。)
- ・『中項目「災害看護」』の独立は今回の出題基準改定のポイントをまさしく突いている。看護の活動の場は病院だけでないこと、さらに災害看護という比較的新しい分野の浸透を目的としていると考えられる。
その4.知っておこう〜必修問題は出題数に差がある〜
必修問題の4つの項目(目標Ⅰ〜Ⅳ)の構成は変わっていません。しかも第98回までは項目ごとに出題数がある程度保たれています。(下表参照)
| 目標I | 目標II | 目標III | 目標IV | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第93回 | 5 | 4 | 11 | 10 | 30 |
| 第94回 | 5 | 5 | 10 | 10 | 30 |
| 第95回 | 4 | 5 | 11 | 10 | 30 |
| 第96回 | 5 | 5 | 13 | 7 | 30 |
| 第97回 | 5 | 5 | 12 | 8 | 30 |
| 第98回 | 5 | 5 | 12 | 8 | 30 |
※必修問題は第93回から導入。各30問。
目標Ⅰと目標Ⅱで約1/3、目標Ⅲおよび目標Ⅳはそれぞれ1/3程度出題されています。 今度の第99回から50問になりますが、出題数のバランスはそれほど崩れないと予想しています。おおよそで考えれば目標Ⅰは8〜10問程度、目標Ⅱも8〜10問程度、目標Ⅲは15〜20問程度、目標Ⅳも15〜20問程度になります。 この根拠はいろいろあり、ここでは説明しきれませんが、これまでの文章からも目標Ⅲと目標Ⅳはたくさん出そうだな...とイメージはできると思います。ですから徹底的に勉強する必要が高い部分とも言えます。
その5.考えておこう〜必修問題は難しくなるのか?〜
結論から言えば、必修問題が難しくなることはありません。それは、看護師国家試験の目的自体が落とすための試験ではないからです。
このことはこのWEB『看護師のまど』や『FLAP!』でたびたび伝えている通りです。 ですから、たとえ出題基準が変わっても、"知らない""難しい"知識がたくさん問われることはありません。 出題基準は毎年変更するものではありませんから、数年に一度、新たな重要項目を加えたり、一部修正する必要が生じるというだけのものであって、それによって難しくなるわけではないのです。 したがって、必修問題以外も難しくなるわけではなく、学習すべきポイントをきちんと国家試験バージョンに変換できていれば問題はないのです。
看護師国家試験は100の曖昧な知識より50の正確な知識の方が大切であると思います。 必修問題は50問になって40問以上正解しなければならないというプレッシャーはありますが、時間はまだ十分にあります。 今回のことを参考にして、焦らずに1つ1つ丁寧に勉強してください。
松本晋圭
新宿セミナー 看護師国試対策担当
看護師国試対策大手予備校の一つ、新宿セミナーの国試対策担当で中心的な人物の一人。名物講座「過去問を5年分解く!」「新傾向対策〜直前スペシャル〜」など多くの講座を立ち上げる。看護系学校では1年生から最高学年までそれぞれの時期にあわせた国家試験ガイダンスを行い、高評価を得ている。













