国家試験合格対策ドリル(2020〜2021)Vol.1 国試の準備は春休みから

国家試験合格対策ドリル(2020〜2021)第1回

第109回の出題から学びたいこと

第108回に引き続き、国試対策本に余り載っていない事項を特に出題しているような印象を受けます。
⇒ 教科書に立ち戻って、知識を補うようにします。
第109回は、特に、医療者として当然身につけているべき知識が多く問われたように思われます。
⇒ そのような、臨床上の医学的知識に基づいて正答を「判断」する能力を求めている問題が目立ちます。この場合の医学的知識は「重要ポイント」でもあり、試験勉強の際に、積極的に知識を増やしておく必要があります。
場合によっては、信頼できる「家庭医学書」で、疾患の鑑別を意識しながら、そのようなポイントを総ざらいしておくのもよいでしょう。疾患については、「病態関連図」の本で一通り勉強しておきましょう。
第109回では、解答の際、問題文の中に正答のヒントが与えられている出題が多かった。
⇒ 問題文をきちんと読み、問題文に即して解答することが必要です。このような出題では、知識を持っていなくても正解できるため、丁寧に対応しないと損をします。特に、知識を持っている場合は、勉強している分、早合点をしてしまって、かえって点数を失う可能性がありますので、注意しましょう。

【例題1】 第109回午前56

幼児を対象とする定期予防接種はどれか。
1. DTワクチン(二種混合)
2. ロタウイルスワクチン
3. BCGワクチン
4. 水痘ワクチン

【正答】 4

このような設問は、これまでであれば、「定期予防接種はどれか」といった単純な形をとっていました。しかしながら、ここでは、「幼児を対象とする」という複合的な設問になっています。

すなわち、「定期予防接種」は、いくつも該当するものがありますが、「幼児」ということでは、「水痘ワクチン」だけです。

ちなみに、児童福祉法で、満1歳からが「幼児」で、生後0日~満1歳未満は「乳児」です。なお、母子保健法で、出生後28日未満を「新生児」、7日未満を「早期新生児」といいます。

【例題2】 第109回午前4(必修)

健康保険法による療養の給付の対象はどれか。
1. 手 術
2. 健康診査
3. 予防接種
4. 人間ドック

【正答】 1

選択肢の並びから、正答は1であることが容易に分かりますが、それならば、「療養の給付」ではなく、「医療給付」ではないかという疑問をもたれると思います。

「医療給付」という用語ですが、これは、「健康保険」という概念ないし考え方の中で、学問的に、その項目を表すために使われるものであるようです。

しかしながら、健康保険法と国民健康保険法では、それとは違い、実務的には、わざわざ、「療養の給付」と「療養費の支給」という語が用いられています。

一方、生活保護法などの、対応する同様の制度には、「医療の給付」が用いられています。

【例題3】 第109回午後23(必修)

成人で1日の尿量が100mL以下の状態を示すのはどれか。
1. 希 尿
2. 頻 尿
3. 乏 尿
4. 無 尿

【正答】 4

乏尿、無尿、尿閉を整理しておく必要があります。

尿量は1000~1500 mLが正常な量です。

乏尿とは、1日の尿量が、物質代謝の最終産物(老廃物)を体内から除去するのに十分でない状態のことです。尿量が400 mL/日以下の場合に乏尿とします。尿量が少ないと、尿素やクレアチニンなどを十分に排泄することができないため、高窒素血症などを起こします。腎不全による乏尿では尿比重が高くなります。

無尿は目安として100 mL/日以下になった状態であって、尿が全く生成されないことではありません。尿の排出が全くない状態は尿閉といいます。

なお、第109回で注意しておきたい用語として、急性期患者の生体反応としての異化亢進、癌の悪液質(低栄養状態)、過呼吸(頻呼吸ではなく、呼吸の深さ)などがあります。自分で調べてみてください。

【例題4】 第109回午前23(必修)

皮下注射で適切なのはどれか。
1. 注射部位を伸展する。
2. 注射針は18~20 Gを使用する。
3. 針の刺入角度は45~90度にする。
4. 皮下脂肪が5 mm以上の部位を選択する。

【正答】 4

第109回で特に目立ったのは、看護技術の細かい知識です。臨地実習の現場では説明が省略されたり、通常のマニュアルに記載されていなかったりする知識が多く出題されています。十分なフォローが必要です。

他に出題されているのは、パルスオキシメータでは、装着部位に冷感がある場合は温めて、十分な血流がみられるようにすること、成人の気管内吸引では、実施前に咽頭部の分泌物を吸引すること、などです。

今後注目すべき項目

第107回以降、疾患と、臨床上関係する特徴的な基本事項の組み合わせを問う出題が目立ちます。病態関連図などで、きちんとフォローする必要があります。

・細菌性髄膜炎
・・・羞明
・劇症型1型糖尿病
・・・腹痛
・脳梗塞の後遺症
・・・過活動膀胱(切迫性尿失禁(神経因性))

第109回では、自分でやってみてイメージすることで正解に至る問題が出題されています。自分でやってみるという習慣を、常日頃から身につけましょう。介護用ベッドの柵の配置で適切なものを判断するという問題などが出ています。

第109回では、全体的に、社会保障制度が非常に多く出題されました。第109回は、主に平成29年(2017年)の統計を中心に出題されましたが、この年までに新しく設けられた制度が、当たり前のように多数出題されています。そして、このことと関連して、多数の、新しい項目が出題されていることに注意が必要です。例:認知症初期集中支援チーム、災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉、精神保健医療福祉の改革ビジョンとしての「地域生活支援の強化」、医療介護総合確保推進法で推進する「地域医療構想」、など。

先輩たちから情報を集めよう

春休みは、こうして、先輩たちの体験を聴き出すことができる絶好のチャンスです。先輩たちからの情報収集に励みましょう。どのように教科書に取り組んだか、どこの予備校の講座がよかったか、模擬試験をどのように活用したか、などの情報が特に大事です。うまくいった体験よりは、うまくいかなかった体験を参考にさせていただくと、失敗を回避することができます。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長

蜂谷 正博 メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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