国家試験合格対策ドリルVol.1 国試の準備は春休みから

基礎的な事項は国試対策本だけでなく教科書でもおさえる

第104回の国試では、基礎的な事項でありながら、国試対策本に載っていない事項が多く出題されました。教科書やインターネットで、それらを補っておく必要があります。

そのような問題をみておきましょう。

【例題1】 第104回午後10

嚥下困難のある患者への嚥下訓練において連携する職種で最も適切なのはどれか。
 1. 歯科技工士
 2. 言語聴覚士
 3. 義肢装具士
 4. 臨床工学技士

【正解】 2

 「連携する職種」とは、看護師からみて、ということです。
 言語聴覚士(ST)は、言語聴覚士法によって、「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助」を行います。
 また、業務としては、「診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる」と定められています。こうして、「きこえ」「ことば」「高次脳機能」「嚥下・摂食」に障害のある方を支援します。

【例題2】 第104回午後8

平成24年(2012年)の国民生活基礎調査で、世帯総数における核家族世帯の割合に最も近いのはどれか。
 1. 30 %
 2. 45 %
 3. 60 %
 4. 75 %

【正解】 3

 厚生労働省の国民生活基礎調査では、世帯構造別の世帯数を推計しており、核家族世帯を「夫婦のみ」、「夫婦と未婚の子のみ」、「ひとり親と未婚の子のみ」の世帯に分けています。
 平成24年では、「夫婦のみの世帯」(22.8%)、「夫婦と未婚の子のみの世帯」(30.5%)、「ひとり親と未婚の子のみの世帯」(6.9%)となっており、これらを合計した核家族世帯の割合は60.2%となります。

解答に困る問題ややっかいな問題も出題されることがある

第104回では、特に社会保障の問題で、余り出てほしくない問題が大胆に出題されました。

【例題3】 第104回午前2

日本の平成22年(2010年)における傷病別にみた通院者率が男女ともに最も高いのはどれか。
 1. 腰痛症
 2. 高血圧症
 3. 歯の病気
 4. 眼の病気

【正解】 2

 この問題は、やっかいな問題です。
 通院者率は、国民生活基礎調査として調べられ、調査日が設定されますが、その日に通院していなくても、通院治療が継続している人はカウントされます。
 一方、外来受療率は、3年に1度実施される患者調査で、特定の調査日に外来受療した人がカウントされます。外来受療率は、調査日の1日だけで受療が済むような傷病も含まれます。「消化器系の疾患」が一番多いのですが、これには歯科診療も含まれます。
 通院者率では、高血圧症が一番多いのですが、治療の継続が必要な疾患が傷病として多くなります。

【例題4】 第104回午後57

日本の平成24年(2012年)の養護者による高齢者虐待の種類で最も多いのはどれか。
 1. 身体的虐待
 2. 心理的虐待
 3. 介護等放棄
 4. 性的虐待

【正解】 1

 第101回の国試(2012年2月実施)では「家庭内における高齢者虐待に関する調査(2004年)」から出題され、この調査によれば、心理的虐待が最も多くなります。
 今回の第104回では、「高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」の方が採用されています。これは平成18年度(2006年度)以降、毎年、厚生労働省から出されています。こちらの方では、身体的虐待が最も多くなります。
 高齢者虐待防止法では、第2条第4項の1(ハ)で「心理的虐待」の定義を「高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」としています。これは、「心理的虐待」を、かなり限定的に、厳しくとらえているように思われます。
 また、「高齢者虐待防止法に基づく調査結果」では、相談・通報があった事例についてのみ、市町村による事実確認調査が実施された上で、数値となります。
 平成24年(2012年)の養護者による高齢者虐待では、「身体的虐待」65.0%、「心理的虐待」40.4%、「経済的虐待」23.5%、「介護等放棄」23.4%となっています。
 被虐待高齢者は、女性が77.6%、年齢は 80歳代が42.3%です。
 被虐待高齢者からみた虐待者の続柄は、「息子」が41.6%で最も多く、次いで「夫」18.3%、「娘」16.1%となっています。

用語を正確に把握しよう

第104回では、前回よりもまして、問題文や選択肢の表現が、過去問での表現とは異なるものにされていることが多くなっています。必ずしも専門用語を用いてはいません。その分、基礎的なところから問われていて、「考えさせる」出題となっており、イメージの把握が明確とならない効果を与えているように見受けられます。

その一方で、専門用語の正確な定義を把握していることも要求されています。

【例題5】 第104回午後15

貧血の定義で正しいのはどれか。
 1. 血圧が下がること
 2. 脈拍を自覚すること
 3. 立ち上がると失神すること
 4. 血色素量が減っていること

【正解】 4

 貧血は、ヘモグロビン濃度(血色素量)が基準値を下回った状態のことをいいます。
 よく、朝礼で倒れる場合に、貧血で倒れると表現されたりしますが、これは一般に、正しくありません。これは、長い時間立っていたり、同じ姿勢でいたりすることで神経のバランスが崩れてしまい、体(特に下半身)の血管が開いてしまう結果、脳に行く分の血液が足りなくなってしまうために起こるもので、自律神経失調症のうち「血管迷走神経性失神」といわれるものです。起立性調節障害(起立性低血圧)も、その一つです。ふつうの低血圧とも区別されます。
 貧血でも起こりえますが、その場合は重篤です。

先輩たちから情報を集めよう

春休みは、こうして、先輩たちの体験を聞くことができる絶好のチャンスです。先輩たちからの情報収集に励みましょう。どのような参考書を使ったか、どこの予備校の講座がよかったか、模擬試験をどのように活用したか、などの情報が特に大事です。うまくいった体験よりは、うまくいかなかった体験を参考にさせていただくと、失敗を回避することができます。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』『使える!第101回・第100回看護師国家試験解説』などがある。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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