国家試験合格対策ドリル(2017〜2018)Vol.4 判断プロセスに重点を置いて体系的にまとめよう

国家試験合格対策ドリル 第4回

皆さんの中には、基礎を問う出題が増えたとしても、その基礎事項をなかなか定着させることができない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、厳しい言い方かもしれませんが、看護系の学校を目指そうと決心したときの気持ち、つまり初心に立ち戻って、国試と向き合っていただければと思います。国試の勉強を、たんなる受験勉強にせず、看護職に必要な知識を身につける機会ととらえ、知識が増えることを楽しんでいきましょう。

このような勉強は、本当の意味でのアクティブ・ラーニングであると言えます。考えさせるようになってきた出題傾向にもアクティブに取り組んでいきましょう。

患者さんに説明しているかのようにして勉強を進めましょう

国試の究極的な勉強法は、勉強している事柄について、あたかも自分が患者さんを目の前にして説明しているかのようなイメージを思い描いて、まとめておくことです。いずれ皆さんは、患者さんとたえず向き合っていくことになります。その場合の真剣さを、勉強のときから意識しておくことも必要です。説明できる能力は、改定出題基準でも、明示はされていませんが、求められていると言えます。

学んだことは、そのままでは身につきません。実習で、実際に、どうなっているかを見聞しましょう。それが実習の本来の意味です。改定出題基準では、比較的新しい医療器具・治療法も取り上げられるようになっていますので、この実習の時期に、それらを現場で確認してみてください。「学んで時にこれを習う、また説(よろこ)ばしからずや」という言葉が『論語』にあります。学んだことを、折にふれて繰り返し学習することによって身につけてゆくのはなんと楽しいことではないか、ということです。学んだ知識を臨床の場で確実なものにしていきましょう。

出題基準がまた改定されます

平成30年の国試から、出題基準がまた改定されます。前回の出題基準の改定から、看護師国家試験は、看護師に求められる実践能力と看護学校卒業時の到達目標等を反映した内容となるように改革され、基礎を問う出題となるように強く意識して問題が作成されるようになり、国試の出題の仕方自体がポイントをおさえるようになったといえます。今度の改定もこれを受け継ぎ、さらに、「体系的」ということを強く意識した出題になりそうです。改定出題基準の解説のいたるところで、「体系的に問うことができるよう、項目を整理・追加した」という表現が繰り返されています。この、「体系的」というのは、言い換えると、知識同士のリンクということです。これは、出題基準を改定する過程で、「基礎的知識を状況に適用して判断を行う能力を問う」ということが重視されるようになり、「判断プロセス」がキーワードになったということを踏まえたものです。これに伴って、各機能障害のある患者について、アセスメント/検査・処置/治療/看護の体系的な知識が問われることになります。そして、必修問題の出題として、基本的な臨床検査値の評価が明記されています。以下では、この改定に即している過去問を取り上げてみましょう。現行でも、必修問題で看護技術の問題の割合が多くなっていることに注意が必要です。

第104回午後19(必修問題)

成人の安静時における所見で異常なのはどれか。
 1.体温 36.2 ℃
 2.呼吸数 12/分
 3.脈拍 116/分
 4.血圧 128/84 mmHg

【正答】 3

改定出題基準では、基本的な臨床検査値の評価ということが言及されています。
次では、正常を○、異常を×とします。

1. ○

体温は早朝が最も低く、夕方に最も高くなります。成人は、腋窩温で36℃台が正常です。
2. ○

呼吸数は12~15/分程度が正常値です。
3. ×

脈拍100/分以上は頻脈であり、異常所見ということになります。
4. ○

収縮期血圧139mmHg以下及び拡張期血圧89mmHg以下が正常域血圧です。どちらか一方でも正常域を上回ると高血圧症と診断されます。
ただし、130~139mmHgかつ/または85~89mmHgは正常高値血圧とされ、正常血圧は120~129mmHgかつ/または80~84mmHgです。ここでの128/84mmHgは「正常血圧」です。なお、至適血圧は120mmHg未満かつ80mmHg未満です。

第106回午前22(必修問題)

点滴静脈内注射中の刺入部位の腫脹を確認したときに、最初に実施するのはどれか。
 1.体位を変える。
 2.注入を中止する。
 3.刺入部位を挙上する。
 4.周囲のマッサージを行う。

【正答】 2

改定出題基準では、輸液管理ということが何度も言及されています。
抗癌薬の点滴静脈内注射が血管外の周辺組織に漏れると、組織の炎症や壊死をもたらします。漏れた直後は、他の薬剤と同様に無症状、あるいは軽い発赤・腫れ・痛みなどの皮膚症状が出現しますが、その数時間~数日後には症状が増悪し、水疱形成、潰瘍形成、組織の壊死につながります。さらに重症化すると瘢痕形成、ケロイド化して部位によっては運動制限をきたす場合もあります。そのため血管外漏出の予防と漏出時の迅速で適切な処置が重要となります。
よって、抗癌薬の皮下への漏れが疑われる場合は、直ちに注入を中止し、医師に報告して指示を受けるようにします。なお、指示があるまでは抜針してはいけません。
何度も関連する出題が行われており、第104回午後42など。

第103回午後45

赤血球濃厚液の輸血について正しいのはどれか。
 1.専用の輸血セットを使用する。
 2.使用直前まで振盪させて使用する。
 3.使用直前に冷蔵庫から取り出して使用する。
 4.呼吸困難出現時は滴下数を減らして続行する。

【正答】 1

改定出題基準では、輸血ということが何度も言及されています。

1. ○

輸血時は、専用の輸血セットを使用します(濾過装置を具備した輸血用器具を用いて、静脈内に必要量を輸注します)。
2. ×

赤血球濃厚液は振盪させる必要はありません。血小板の場合は、室温(25℃)で振盪させないと品質に変化が生じるため振盪させます。
3. ×

赤血球濃厚液は冷蔵庫(2~6℃)で貯蔵します。使用する際は、あらかじめトレイに出しておいて、医師・看護師で確認をしてから用います。有効期間は採血後21日間です。
4. ×

輸血時に呼吸困難が出現したら、ただちに輸血を中止して、適切な処置を行います。

第102回午後4(必修問題)

倫理原則の「善行」はどれか。
 1.患者に身体的損傷を与えない。
 2.患者に利益をもたらす医療を提供する。
 3.すべての人々に平等に医療を提供する。
 4.患者が自己決定し選択した内容を尊重する。

【正答】 2

第102回の出題では、国試対策本などに載っていないため、大変評判がよくなかったのですが、改定出題基準の小項目として、倫理原則が提示されるようになりました。
日本の医療現場で、次のような、医療に関する4つの倫理原則が受容されているとする考え方があります。「善行」は「ぜんこう」と読みます。

 ・自律尊重原則

・・・「自律的な患者の意思決定を尊重せよ」
 ・善行原則

・・・「患者に利益をもたらせ」
 ・無危害原則

・・・「患者に危害を及ぼすのを避けよ」
 ・正義原則

・・・「利益と負担を公平に配分せよ」
1. ×

無危害原則です。
2. ○

善行原則です。
3. ×

正義原則です。
4. ×

自律尊重原則です。

また、学習方法の工夫も大事です。基礎となる解剖生理学から病態生理学や看護技術へとリンクさせることを第2回で取り上げましたが、疾患や治療法を勉強しているときは、逆に、その根拠を解剖生理学などに求めてみましょう。もちろん難しいですから、一部で構いません。このような工夫は改定出題基準への対応ともなります。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』など。動画配信サイト「メディカルアップ」で名講義を公開中。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/

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