国家試験合格対策ドリルVol.6 国試直前の勉強の進め方

国試直前の勉強の進め方

なりたい看護師を目指し、最後まであきらめない。

国試に本当に必要な事項に集中しましょう

最後まで勉強をやり切ろう

いよいよ看護師国家試験も目前に迫ってきました。ふだんから勉強をしている人は何も心配することはありません。受験者の90%が合格する試験だからです。ただ、必修問題で80%以上の点数を取らないと、他がよくても合格できませんから、それだけは注意が必要です。

忙し過ぎて、試験対策が全くできなかったという人は、あきらめたら、それで終わりです。最後まで、あがくことが大事です。あがき方ですべてが決まります。どうすればよいかというと、直前5か条を示しておきます。

直前5か条

  1. 体調管理に気をつける
  2. 出題されそうなところを勉強する(出そうにないところは手をつけない)
  3. 勉強したところは要点にまとめ、その要点を憶える
  4. 本当に直前になったら、あれこれと手を出さない
  5. 試験会場では、問題が配られる前まで、知識を整理する

直前の体調管理

まず、体調管理ですが、試験当日はもちろんのこと、試験勉強期間中も、勉強時間が失われますから、できるだけ風邪をひかないようにします。気道を冷やさないように普段からマスクをするのもよいです。また、体を温める食べ物を摂ると体調が維持できます。試験当日は着脱しやすい服装にします。ここ数年、受験体験記を拝見しますと、どこの会場も寒く、オーバーを着て解答に臨んだ人が多いようです。ただ、昼になると暑く感じるようですので、調節が必要です。どこの会場もトイレが大変混むようです。早目に行動するようにします。昼食を摂ると眠くなると言われていますが、最近の生理学的知見では、起床後、8時間程で大脳が休もうとして眠くなる、ともされています。午後の試験で眠くなったら、目を短時間でも閉じると、頭がすっきりする場合があります。人によっては、下痢止めを持参しましょう。

何が出題されるか自分で予想してみる

この時期はもう、難しすぎるものには取り組まないのがよいです。難しいものの多くは、基本的なものが複合したものです。ですから、基本をたくさん身につけておくと、試験当日の頃には難しいものも自然と解けるようになっています。

そして、出題されそうなところを勉強するのが大事です。どこが出題されそうであるかを見極めるには、過去問に取り組むことが必要です。これは過去問の答を丸暗記するということではありません。過去問を解いたら、
(a)結局、この問題のポイントは何か、ということをノートに書き出してみる
ことをします。また、
(b)自分が出題者だったら、どのような問題を作るかを想像し、実際にアレンジしてみる
と実力がアップします。アレンジするときに、いろいろと調べると、必要な知識が拡がっていきます。

出題の傾向と勉強方法のアドバイス

ここで、出題の傾向分析と、そのための勉強方法のアドバイスをまとめます。

傾向の概要

改定出題基準により出題された第103回の本試験と追加試験(本試験が大雪で混乱したことにより実施)では、それ以前の国試と異なり、全体にわたり、問題自体が、重要ポイントを踏まえて出題されました。この傾向は特に必修問題に強く出ています。

【勉強 ①】
過去問を解いておきます。特に、第103回の追加試験は、重要な情報源として必ず解いてみてください。これを第103回本試験と比べることにより、改定出題基準による出題で意図されていることがパターンとして見えてくるはずです。そのパターンは今後の出題でも続くと考えられます。なお、第103回でも、それ以前の出題と類似した問題がたくさん出ています。

【勉強 ②】
問題自体が重要ポイントを踏まえているということに対応するには、ふだんから、何が重要かを見抜く力をつけておくことが必要です。

【勉強 ③】
重要ポイントを踏まえた出題では、設問→正解というように結びついていますが、特に、過去問と類似した問題が出題される場合、必ずしも全く同じ問題が出るのではなく、
  設問→(過去問での正解)→それと関連する事項・表現
といった一歩踏み込んだ出題がなされています。これに対処するには、暗記に頼る勉強ではなく、理解に基づく勉強が必要です。

特徴的な出題形式

第103回では、「Aと比較したBの特徴」といった言い回しが多く使われるようになりました。これは、言い換えると、一見するとAとBは似ているけれども、AとBを区別する、ということです。

【勉強 ④】
第103回では、「Aと比較したBの特徴」もそうですが、事項をきちんと整理して勉強することを求めているように感じられます。
たとえば、第103回午後80では、「抗凝固剤が入っている採血管を使用する血液検査」を選ぶようになっていて、少し考えれば、「血球数」が正解であることがすぐ分かりますが、他の場合はどうなのかを調べてみたくなります。複数の採血管で真空採血する場合、凝固しても差し支えないものを先に採血します。茶管と呼ばれる生化学検査用(ゲル状の分離剤や凝固促進フィルムが入っている)、次に採血量が正確でなければならない凝固検査用(3.2%クエン酸ナトリウム)、赤沈用(3.8%クエン酸ナトリウム)、緊急検査(ヘパリンナトリウム)、そして凝固すると困る血算管(抗凝固剤のEDTA-2Kが入っている)、血糖管(フッ化ナトリウムなどの解糖阻止剤)、という順番で行います。

薬剤の出題数

第103回本試験でも追加試験でも、薬剤とその副作用に関する問題の出題数が10問程度となりました。

【勉強 ⑤】
出題数が増えましたので、当然、勉強をしておかなければなりません。ただし、出そうなものを重点的におさえるようでないと、勉強の時間配分に失敗します。緩和ケアや麻薬の取り扱いの出題が大変多くなっています。

計算問題の多様化

第103回の追加試験午後90では、ローレル指数と関連するローレル肥満度の計算が出題されました。受験参考書には記載がないため、戸惑った受験生が多かったようです。

【勉強 ⑥】
計算問題が必ず出題されることになったため、新傾向の出題が試みられています(第103回本試験午後106の月経周期など)。計算で基本的なものだけは、教科書を見返してピックアップしておく必要がありそうです。

見かけの新しさに惑わされない

たとえば、国際看護では、「来日した外国人の患者」を想定した出題が多く、目新しいですが、特別な知識は前提されていません(保険未加入のケースとかは出ていません)。

【勉強 ⑦】
今後、実際に現場に出ると、外国人の患者に接することは多くなるはずです。自分が勤務する医療機関に外国人の患者が来院したら、どう対応することになるかということに関心をもってテレビなどを視るだけで、自然と知識が入ってきます。

たくさん勉強しているのに成果が上がらない方へ

参考書やまとめの本は、周りの多くの人が使っているもので勉強すると安心ですが、この時期になっても、まだ調子が出ないという方は、仕方がありませんから、早めに自分に合った参考書に変えてみるというのも一つの手です。

【勉強 ⑧】
過去問を解きながら、参考書同士を見比べる「比べ読み」をしてみると、見方が立体的になり、急に、問題の意図するところがよく分かってくるようになることがあります。そして、本当は、どの参考書が良いものなのか、見極めがつきます。

直前には、あれこれと手を出さない

さきほどの(a)を増やしていけば、要点集となります。国試直前には、こういうものを復習することが理想的です。直前の時期になって、これまで手をつけていなかったものに手を出すと、あれもやっていない、これもやっていない、となって、意気消沈してしまいます。

問題が配られるまで要点を見直す

試験当日は、問題が配られるまで、このような要点を見直します。不思議なことに、受験体験記を拝見しますと、試験開始間際に見ていたものが出題された、ということが多いようです。場合によっては、受験参考書や受験雑誌の付録となっている要点集やデータ集を持参して、間際まで眺めてください。これらの付録を使うのであれば、試験前に一通り目を通しておくべきです。

試験当日の昼休みに、友達同士で午前の試験のでき具合を確認することがよく行われているようですが、これはやめましょう。当日は互いに別行動をすることを事前に申し合わせて、問題が配られるまで、あがきます。なお、解答のマークシートは横型と縦型があり、隣の席の人が横型であれば、自分は縦型で解答することになります。午前と午後で同じ型のものとなります。2種類のマークシート用紙のサンプルが受験対策の本に掲載されていたりしますので、とっさのことに対応できないと思われる人は前もって慣れておくようにしましょう。

長めの問題文はメリハリをつけて黙読

今のところ、看護師国家試験の問題の文章は短めで、分かりやすいですが、出題の意図が見えてこない場合、イントネーションとアクセントをつけて何度も黙読し、また、その読み方を少し変えると、何が問題になっているかが浮かび上がってくるはずです。

試験で皆さんが最大限に力を発揮できますよう祈っております。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』『使える!第101回・第100回看護師国家試験解説』などがある。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/