国家試験合格対策ドリルVol.5 冬期・直前講習で勉強にはずみを

冬期・直前講習で勉強にはずみを

本格的な受験勉強に向けて雰囲気をつくろう

追い込みの時期の過ごし方

臨地実習は終わりましたでしょうか? あるいは、もうすぐ終わりというところでしょうか。学校によっては、看護研究、卒業論文、卒業試験がこの時期に行わ れるかもしれません。大変だった実習が終わると、解放感から、勉強が手につかなくなる方がいます。そのような自分の弱さを知って、この時期での勉強を計画し、ストレス発散も準備しておいて、心理的なコントロールが効くようにしておくとよいでしょう。

また、どうしても年末年始にだらけるということであれば、予備校の冬期講習に出席して、勉強にはずみをつけるようにすることをお勧めします。予備校によっ ては、まさに年末年始のときに開講しているところがあります。11月初めから申込受付が始まっていることが多いですから、早目に申し込みましょう。

学校によっては、いろいろな模擬試験を受けることもあるようです。模擬試験の解説集は、どんどん小奇麗な冊子になってきていて、それが模擬試験の信頼度で あるかのように勘違いしがちですが、模擬試験には難問や奇問がたくさんあります。あくまで看護師国家試験の過去問が基本であり、それに照らして、出そうな 問題に取り組むようにしましょう。模擬試験は、一般に、看護国試よりも難しく作ってあります。特に、必修問題は、本番では80%以上できなくてはなりませ んが、模擬試験では自分の正答率が80%に達しないということがよくあります。勉強が不足しているかもしれませんが、模擬試験のすべての問題が良問である とは限りません。模擬試験は本当の試験ではありませんから、これで落ち込んではいけません。ただし、他の多くの人ができているのに、自分は間違った、とい う問題は、きちんとフォローするようにしましょう。

計算問題を恐れてはいけない

看護国試では多くの方が苦手とする計算問題が必ず出題されるようになり、新しい形式での出題が工夫されつつあります。計算問題の基本は、(1)単位をそろえ、(2)比例式にする、ということです。この基本に忠実であれば、計算問題の多くは、簡単に解けてしまいます。

計算問題の正確な解説は、実は、意外と少なく、かえって混乱を与えるものもあります。今回、このような計算問題をきちんと扱ってみました。変な解き方をして、同じ計算結果が出るかもしれませんが、それではダメです。誤解をしていないかチェックしてみてください。

看護国試の計算問題を正確に解こう

 計算問題の基本は、(1)単位をそろえ(2)比例式にする、ということです。
 比例関係はどうしても基本的に大事です。
 そして、比を表す比例式で、「内項の積は外項の積と等しい」という公式だけは、憶えておく必要があります。
 この公式は、小学校などでは使用しないことになっていますので、使うのをためらっている方が多いかもしれません。中学校で、相似図形のところで教わることが多いようです。この公式は、社会に出ると大変有用なものですので、ぜひ使っていただきたいものです。
 証明を示しておきますので、公式の方は安心して使ってください。

a:b=c:d ⇒ a×d=b×c

(証明)
  a:b=c:d
比率は、分数にしても同様にはたらきます。
  a/b=c/d
分母を通分(公倍数で共通化)します。
  ad/bd=bc/bd
両辺が等しく、分母が共通であるため、分子も等しくなります。
  ad=bc
こうして、a×d=b×cが導かれました。(証明終)

[例題1] 第103回午後23

点滴静脈内注射750mℓ/5時間の指示があった。
20滴で約1mℓの輸液セットを使用した場合、1分間の滴下数はいくらになるか。

 5時間かけて行うということで、分の単位にそろえると、5×60分=300分かかります。
 1mℓにつき20滴であるので、750mℓでは、20×750=15,000滴となります。
 300分で15,000滴の滴下数であるので、1分あたりでは、15,000÷300=50滴となります。
 なお、現在、輸液セットは、20滴/mℓのもの(一般用)と60滴/mℓのもの(精密用)が用いられています。

【例題2】 (第95回午前46を改変)

5%のグルコン酸クロルヘキシジンを用いて0.2%の希釈液1,000mℓをつくるのに必要な薬液量はいくらか。
 この問題は注意が必要です。というのは、ここの%は、小中高までの%の扱いとは異なるからです。医療機関では、何も書いていなくても、薬剤の表記の「%」は「w/v%」(ウェイト・パー・ボリューム・パーセント)を意味します。そして、1w/v%は、溶液100mℓ中に1g溶けているということです。「w/v%」は「%(w/v)」と書くこともありますから、「%」は、「%(w/v)」の「(w/v)」が省略されたものと考えることができます。
 よって、【例題2】は、本当は次のような問題なのです。皆さんも、このように翻訳して考えるようにしてください。

【例題2´】

5w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンを用いて0.2w/v%希釈液1,000mℓをつくるのに必要な薬液量はいくらか。
 公式のようなものもありますが、記憶があいまいですと、頭が混乱します。ここでは、公式は紹介せず、w/v%の定義に戻って解いてみます。その方が納得できると思います。
 0.2w/v%希釈液ということから、0.2g/100mℓの濃度であり、この希釈液を1,000mℓつくるには、グルコン酸クロルヘキシジンが2g必要となります。
 5w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンは5g/100mℓですので、必要な薬液量をxmℓとすると、グルコン酸クロルヘキシジンそのものは2g必要なので、
  5g:100mℓ=2g:xmℓ
より、5×x=100×2
よって、x=40mℓ

【例題3】 (第100回午後43を改変)

150kgf/cm2 500ℓ酸素ボンベの内圧計が90kgf/cm2を示している。この酸素ボンベを用いて2ℓ/分で酸素吸入を行うことになった。
使用可能な時間はどれくらいか。

 酸素ボンベの内圧は、酸素が減れば、それだけ下がるため、酸素がなくなる少し前までは、比例関係が成り立ちます。また、kgf/cm2の単位のみならず、MPaでも同様に考えることができます。1MPa=10kgf/cm2という関係になります。
 150kgf/cm2(充填圧)のときの酸素の量が500ℓであり、90kgf/cm2のときの酸素の量をxℓとします。
 150:500=90:xより、
 150×x=500×90
よって、x=300ℓで、1分間に2ℓの酸素を吸入しますから、300ℓあれば、あと300÷2=150分の間、使用可能です。
 通常はここまでで説明が終わりますが、現実的には酸素ボンベの容積というものがあり、また、ボンベを完全には空にしないこと、メーター誤差、メーター読 み取り誤差、交換時ロス等を考慮して、使用可能量というものが設定されており、これは、酸素残量に安全係数0.8をかけたものになります。この例題では使 用可能量240ℓ、使用可能時間120分間となりますが、看護国試では、今のところ、この最後のところは考えなくてもよい問題設定となっています。

〈参考〉カロリー計算について
カロリーの計算については、計算以外に、いくつかの暗黙の知識が必要です。それを憶えておきましょう。

 

(1)アトウォーター係数を憶えます。
・1gの脂質は9kcalのエネルギー
・1gの蛋白質は4kcalのエネルギー
・1gの炭水化物は4kcalのエネルギー

 

(2)脂質のときには、脂肪エネルギー比率というものを考える必要があります。エネルギー必要量が示されたときに、そのうち、どれくらいのエネルギーを脂 質の摂取によって得るかの割合を示すものです。これは、とりあえず、30歳以上の値で、「20(%)以上25(%)未満」と憶えます。計算では、
 (エネルギー必要量)×(0.20~0.25)
とします。1gの脂質は9kcalですので、出てきた計算結果を9で割ると、適切な脂肪摂取量(g)が求められます。
 炭水化物が問われたときは、「50以上70未満」とします。

 

(3)炊いた状態の精白米100gあたりのエネルギーは168kcalであることを憶えておきましょう。
 また、成人のご飯茶わん1杯には炊いた状態の精白米が約150g、糖尿病患者用のご飯茶わん1杯には同じく約100g入ります。


蜂谷正博 メビウス教育研究所 塾長
蜂谷 正博
メビウス教育研究所 塾長

日本赤十字看護大学をはじめ全国の看護学部、看護専門学校、薬学部で看護師・保健師・薬剤師国家試験対策講座を担当。著書に『必修ラ・スパ』『使える!第101回・第100回看護師国家試験解説』などがある。元東京大学大学院医学系研究科客員研究員。

メビウス教育研究所:http://www.mebius-ed.co.jp/